「音楽療法?何?それ」「音楽療法士という仕事があるなんて知らなかった」私が音楽療法士を目指していた頃、音楽療法の話をするといつもこんな答えが返ってきました。
しかし、テレビや新聞などで音楽療法が取り上げられるようになってから「音楽療法」の認知度は次第に高まってきました。
そこで、今回は音楽療法について私の体験をふくめてお話していきます。
記事の目次
音楽療法とは?
音楽療法とは、“三大音楽要素”であるリズム・メロディ・ハーモニーが持つ音楽の機能性を利用して対象者の心身の安定化や活性化を図ることを目的としています。そして、その案内人の役目をするのが“音楽療法士”です。
音楽療法の始まり
音楽療法という言葉は第二次世界対戦後のアメリカの帰還兵が心身症にかかった時、音楽が持つ不思議な力によって多くの帰還兵の心身症に効果があったことから音楽を治療目的で使用したことで生まれました。
そしてそれがヨーロッパへ広がり、やがて日本にも入ってくることとなりました。
介護業界での音楽療法の仕事内容
ここで具体的な音楽療法の仕事の内容について解説いたします。
音楽療法士が働く場所
音楽療法士が働く場所で一番多いと考えられるのが介護業界です。
その中でも特に音楽療法士の活躍の場が広いのが以下のような施設になります。
介護施設では、午前中と昼食後にそれぞれ1時間程の“レクリエーションの時間”が設けられており、音楽療法はレクリエーションの中の1つのプログラムとして組み込まれることがほとんどです。
音楽療法の種類
音楽療法には対象となる人が1人の「個人音楽療法」と、対象者が数名から数十名の「集団音楽療法」があります。では次に、具体的な音楽療法の内容を確認してみましょう。
受動的音楽療法
対象となる人の“今”の心理状態に有効な音楽を聞いてもらって心身のリラックスあるいは活性的になることを目的とする療法のことです。
能動的音楽療法
音楽療法の参加者自身が行動して心身のリラックスあるいは活性的になることを目的とする療法のことで、具体的には以下のようなものがあります。
- 懐かしい歌を歌って思い出話をする。
- その歌にまつわる話や歌が作られた時代の出来事の話をする。
- 音楽に合わせて手足の運動をする。
- カスタネットや鈴・タンバリンなどの楽器を鳴らす。
音楽療法士の仕事
音楽療法士の仕事は、まず「対象者を知る」ことから始まります。対象者が個人の場合は前もったアセスメントで事前調査をする必要があります。
また集団の場合でアセスメントが難しい時には介護職員から対象者の情報を聞き取ることが必要になります。
ある程度の情報を得ることができたら次は対象となる人に合わせた具体的なプランを考えます。例えば、以下のようなものです。
- 病気の後遺症で言葉が出にくくなった人に歌で発声を促す
- 認知症の人に懐かしい歌の回想を加えながら心を落ち着かせ徘徊の数を減らす
このように、「目標を立てる」仕事をしたうえで「今どの音楽が何故必要なのか」を考えた後、プログラムの作成に入ります。
また、音楽療法の終了後にはその日の反省を含めた評価を行うことで、次回のプログラムへと繋げる仕事も忘れてはいけません。
音楽療法とは対象者が単に楽しい時間を過ごすことができればいいというものではなく、音楽療法士が注意するべき点がいくつかあります。
- 音楽療法士が作成したプログラムの内容
- 音楽療法の進め方
- 使用する曲の使い方
- 音楽療法士の話し方や表情
以上に目を向けることによって音楽療法の結果は大きく変わってきます。
音楽療法士になるためには
音楽療法士を目指す人が年々増えてきたことで、勉強ができる大学や専門学校・通信講座も増えてきました。
音楽療法士になりたいと思っている人の中には音楽療法の資格の内容や資格取得のメリットを知りたい方も多いのではないでしょうか?
そこで音楽療法士を目指すみなさんに、音楽療法士になるための方法をお話します。
音楽療法士の資格
音楽療法士の資格は民間の認定という形になり、国家資格制定への動きはあるものの、現時点では理学療法士や作業療法士のような国家資格ではありません。
奈良市や岐阜県などのように市や県が独自の公的機関の認定を出しているところもあれば、大きな規模から小さい規模の民間認定資格を出しているところもあります。
音楽療法士の認定資格を取るには
各機関、各学校などによって多少の差はあるものの、認定資格を取るには音楽をはじめ医療に関する学科の単位を取ることや各地で行われる講演への出席・弾き語りや楽器演奏などの実技に加え面接などを実施しているところが多く、通信では年に1回~数回のスクーリング(通学授業)に出席する必要があります。
資格取得のメリット
音楽療法士の資格は認定資格となるために、資格を取得していないからといって音楽療法の仕事ができないわけではありません。
また、認定資格だからといって音楽療法士の資格を取得するのは簡単ではなく、具体的には以下のようなものが必要になります。
- 単位取得のために講演地まで行く
- 楽器演奏の技術や知識
- 音楽療法全般についての課題論文の提出
なぜここまでして音楽療法の資格を取る必要があるのでしょうか?
私が音楽療法士の資格を取得したいと考えたのは“療法”と名がつく限り利用者さんの心を安定させるために正しい知識を身につける必要があると考えたからです。
実際に資格を取得することで利用者さんからも信用を得られるようになりました。
また、資格を取得することで目標を持って音楽療法という仕事を深く知ることができるという別のメリットもあります。
音楽療法士を目指す人へ
音楽療法という言葉は多くの人に知られるようになりましたが、その活動内容についてはまだよく知られていません。
有償の仕事として音楽療法を取り入れる施設が多いとは決して言えず、音楽療法士の募集や求人がほとんどないのが現状です。
しかし、音楽療法の将来に希望を持つことはできないのかというと、そんなことはありません。
介護業界における音楽療法士の将来
音楽療法を必要とする人が増えると同時に音楽療法士を目指す人も増えています。
今後は音楽療法士が有効な音楽療法を行うことで需要がさらに高まり、音楽療法を受け入れる施設や病院などが増えていくことが期待できます。
その時のために努力を惜しまず勉強をして経験を積むことで音楽療法士の明るい将来が広がることに間違いありません。
また、必要とされる音楽療法士への近道でもあるといえるでしょう。
